北ア 剱岳 八峰縦走

投稿日時 2007-5-10 19:58:22 | トピック: 05月

2007/5/2〜5
北ア 剱岳 八峰縦走
メンバー:T城(L),A久(SL),M尾,S津(チームT8!)


ゴールデンウィークに、剱・八ツ峰に行ってきました。天候に恵まれ、例年以上の積雪で一面白銀の八ツ峰で充
実の山行ができました。素晴らしいメンバーに感謝!
なお、当初計画の剱尾根上半部は、初日の行程遅れにより今回は割愛しました。

行程
5月1日
上野発「急行・能登」

5月2日
富山=室堂(10:00発)−雷鳥沢(11:00)−剱御前小屋(13:00着)

5月3日
剱御前小屋(3:00発)−剱沢長次郎谷出合−八ツ峰1.5峰(7:10)−3峰(10:00)−4峰(12:00)−5峰(13:40)−5・6コル
(15:00着)

5月4日
5・6コル(4:30発)− 5峰(5:45)−  6峰(6:30)−8峰(10:00)−八ッ峰の頭(10:30)−池ノ谷乗越(11:30)−剱本峰
(13:00)−早月小屋(17:05着)

5月5日
早月小屋(7:15発)−馬場島(10:05着) 富山の寿司屋経由帰京
■プロローグ
◎T城
きっかけは昨年夏の北方稜線縦走でした。壁・尾根含め剱をやってみたいな、という思いで偵察がてら剱へでか
け、池の平小屋からの裏剱、なかでも八ツ峰の存在感に圧倒され、さらに熊の岩からの風景に気持ちは固まり、
積雪期でもGWならと思い帰宅後A久さんに「GW八ツ峰どうですか!」とメールしたものです。
A久さんがそれに応えてくれ、その後、S津・M尾さんが加わり晴れて「チームT8」(命名・A久:TSURUGI
8ツ峰の意)を結成。トレーニングを経て本山行となりました。

【八つ峰トレーニングメニュー】
3/10-11...日光女峰山(ポッカ)...............L,A久、T城(M村瀬、I原)
3/17-18...赤岳東稜 (雪稜)..................L,A久、T城、S津(H間)
4/07-08...不帰3峰 (雪稜) ..................L,A久、S津(I藤)
4/14-15...阿弥陀南稜(雪稜)................L,T城、M尾
4/28.........越沢バットレス(アイゼントレ)...L,T城、A久、M尾、S津 
4/28.........立川飲み屋(壮行会ハシゴ)  
★5/02-05...八ツ峰(本番!).......................L,T城、A久、M尾、S津
★5/5..........富山すし屋(打ち上げ!)    

■5月2日(霰〜雨、強風)  *M尾*
急行「能登」から立山・黒部アルペンルートを乗り継ぎ室堂へ。初めて見る車窓からの「雪の大谷」も眠くてど
うでも良い!室堂ターミナルで準備をしていたら下山してきたH原君にバッタリ!「GW前半は八つ峰入山者無
し」、との情報をもらう。今年の剣は雪が多く、彼らも源次郎尾根、途中敗退だったらしい。その場で剣尾根は諦
め、「八つ峰縦走」1本に絞ることにする。

ターミナルを出るといきなりの霰と強風!“往復ビンタ”以上に顔が痛い。たまらず、目出帽(私は持ってない)
とサングラスをするが何の役にも立たない!ガスで視界7−8m。竹竿に沿って雷鳥沢を目指すが行き過ぎて「ロ
ッジ立山連峰」まで行ってしまう。引き返し、コンパスとトレースを頼りに雷鳥坂を登る。次第に雨がひどくな
り、前を行く高城リーダーの雨具からもザックからも雨の雫がポタリポタリ。登りの遅い松尾はすぐに前の背中
が見えなくなる。でもみんな、少し行ってはチャーンと待っていてくれる。後ろの天久さんにはゆっくり過ぎて
申し訳ないなー、と思いながらもバテないようにマイペースで登る。ザックが雨を吸ってドンドン重くなる。

まったくのホワイトアウトなのでガスの中にボォーッと旗竿が見えるとホッとする。ルートは先日雪崩があった
為か稜線近くまで直登している。もう少しで剣御前、と言うところでクラストしてきたのでアイゼンを着ける。
この先が本日一番の核心!強風に必死で耐えながら剣御前小屋に転がり込む。あっらら〜っ!ドアを開けてビッ
クリ! そこに立っていたのはなんと、「S山」だった!

この天気にグショ濡れの身体と装備ではモチベーションも大下降、剣沢にテントを張る気にもなれず、軟弱4人
組は“ヌクヌク小屋でビール!ビール!”と相成ったのです。M浦(大)さんも避難していて、談話室での“無
線機無し、ビール付き”の、“ぶなの会3P、交信会”となる。(M浦さんは16時、真砂沢BCに戻った)偶然
にもT城さん、A久さんの九州時代の知り合い(62歳の三原さん)が同宿、昔話に花が咲いていた。
明日の天気は快晴の予報。今日の遅れを取り戻し、五・六のコルまでは行きたい。
1時起床、3時出発となる。で、6時就寝・・・のはずが、7時に夢の中の人となる。


■5月3日(快晴) *T城*
昨日の遅れを取り戻すべく、夜も明けぬうちからの早朝出発とする。1時に起床して小屋の外を覗くと、満点の
星空。よし、これなら行ける!期待に胸が高鳴る。
3時に出発。満月が我らの行く手を優しく照らす。剱沢の大雪原はほのかな月明かりに照らされ、その先には目
指す八ツ峰がくっきり浮かんで闘志をかき立てる。

予定通りのタイムで長次郎谷から1・2ルンゼ出合へ。ようやく空も白み、長次郎谷から見上げる1・2ルンゼは一
直線にはるか頭上の稜線上へ伸びている。H原氏・M浦氏のアドバイスどおり、早朝のため雪は安定し快調に登
高、予定通り4時間で1・2コルへ到達、小ピークに立つ。おやおやここは2峰ではなく、H原氏の言っていた
1.5峰ピークか?



ピークから見上げる八ツ峰稜線は・・・すごい雪!ガイドブックでは見たことないくらいに岩峰上に雪が。おまけに、
いたるところがナイフリッジになっており、ビックリする。そこへ三ノ窓谷側から現れた二人組みが、何事も無
いかのようにすごい勢いで細いナイフリッジを越えて、我々の視界から消えていった。ここまで我らが最先行し
ていたが、彼ら他2パーティにここで先行された。今日の八ツ峰は貸切!ぐらいに考えていたので悔しくもあっ
たが実はこの先彼らのトレースに相当救われた。というのも、極細ナイフリッジに不慣れな我ら(聞くだけでビ
ビッてしまう)、トレースなしでは相当苦戦しただろうから。

さて、そんなトレースに導かれて1.5峰?を出発。彼らがリッジの1段下をまるでリッジの穂先を手すりのよう
にしてシューッと抜けていったところを、我々はオッカナビックリ、エッチラオッチラと越えていく。朝だって
言うのに、日なたの雪はもうクサリ初めて苦戦してしまった。ちなみに1・2コルは、テント適地のはずだがナイ
フリッジを相当掘り起こさないと平らにはなりそうもなかった。

2峰頂上、本来は長次郎側へ懸垂だがあまりの雪に支点掘り出しは不可能、スタンディングアックスビレイでロ
ープをFIXして下降。先行者達はみなノーロープで下降して行ったが、俺達の実力はこんなもんなのさ、いい
んだよ八ツ峰の胸借りるつもりで登ってるんだから、大体安全第一じゃんか!と負け犬的な遠吠えをしたかは、
定かではない。
続く3峰も同様にFIXで越える。

4峰、先行者は懸垂で下降したようだが支点は・・・フム、土嚢か!その先行者の土嚢、なんとフツーの大ビニ。よ
くぞこんなもんで懸垂したもんだ、我々は恐怖を感じオニューの土嚢で支点を再構築。天久親方がテキパキと土
嚢をセット、これって環境破壊やね、と言い残して先行で降りていった。このとき時刻は12時、他パーティとの
定時交信を試みるが応答はなし。
「イヤッホ〜ッ!」ム、何処から雄叫びが?
見廻すと剱本峰直下長次郎谷左俣上部にスキーヤーあり。もしかしてM浦さん?頂上直下から激細ルンゼを下降
してきたみたいだ。えー、あそこ!?みんなド肝を冷やす。今度会ったら聞いてみよう。



本日最後の山場の5峰、ここも長次郎側へ40m×2ピッチの懸垂地点。ガイドブックでおなじみのピナクルが
聳えているが、ムム、なにかが違う。そうか、本では雪なんかついてないんだな!今年の雪はピナクルにも厚く
堆積して風景を一変させていた。そして、先行者はきっと相当苦心の上、1メートル四方の雪を掻き分け支点と
なる岩の突起を見事掘り当てていた。ありがたく支点を使い、高城が先頭で下降。
1ピッチ目15m下の左に、ハーケン3本懸垂支点アリ。2ピッチ目は50m一杯の下降、30m水平トラバース
で、5・6コルに到達。
長い一日お疲れさーん!変化にとんだ充実の一日だった。




■5月4日(快晴) *A久*
昨日よりも随分ゆっくりの4時半出発。今日はヘッデンじゃないぞ!薄明かりの中、行動開始。
6峰に向かってイキナリの約150mアップ雪壁登りから始まる。最初、昨日通過した2人Pのトレースがあるので
ザイルを出す必要は感じなかったけど、雪壁を登るに従って傾斜は増していき、最後にはトップのT城リーダー
がスタンスを作り直しならの登高を余儀なくされる。結構な高度感を味わい、落ちたらイチコロだなーなんて緊
張しつつ、なるべく下を見ないようにしていたのだが、M尾さんはさすがの余裕で五竜から昇る朝日をカメラに
収めたりしている。



いよいよ出てきたナイフリッジをカニ歩きで通過し、見晴らしが良い斜面をひと登り。後方に広がる八つ峰前半
の峰々を従えながら6峰手前の小ピークにかかる。こんな優美なラインに土嚢残置ばかりする訳にはいかないの
で、ここはスタカットとし、T城さんのリードで約10mのクライムダウン。2番手はA久が下降し、直ぐ先の6
峰を先回りして偵察。トポでは懸垂だけど、ここも例によって支点は雪の下で捜索不可能。S津さんの到着を待
ちスタンディングアックスでビレイしてもらって約40mのクライムダウン。ランナーはスノーバーとかろうじ
て露出しているピナクル。トップが降りた頃は雪もカリカリで楽勝だったが、6時を過ぎると徐々に朝日を受け
雪が緩んでくる。最初に決めたスノーバーも全員が通過する頃にはゆるゆるで信頼性は???。

7峰はT城Lリード。このあたりにくると極細ナイフリッジのオンパレード。T城さんは落ちるなら長次郎谷側
と言っていたけど、ただじゃ済まないだろうな。まずはナイフリッジの右側を10m水平に進み、稜線を左に乗
換え5m進んで10mの不安定な雪壁をクライムダウン。

続く8峰へはグズグズの雪壁登り。岩や潅木が出てくるが、逆に足元はボロボロ崩れ落ちていき気持ちが悪い。8
峰のてっぺんはナイフリッジで安定した場所が全然ない。一番に到着したA久がルート工作。皆が来る前にナイ
フリッジにトレースを刻むが、先の3mクライムダウンがイヤラシイので、戻って3人分の足場を刻み、S津さ
んを待ちビレイをお願いする。スノーバー、デッドマンなど、パーティーが装備する全ての武器弾薬を手にして
リード。最後は中間支点を全て使い果たし、泣く泣く片方のアックスを中間支点にとり、何とか安定した場所で
ビレイの体勢をとる。無事に全員通過し、最後ひと登りで八つ峰の頭にゴールイン!!

天気は快晴!正面には真っ白に雪をまとった剣岳がドドーンと鎮座している。右肩から伸びるスカイラインには
クライマーがアリの行列の様に続いている。今日の源次郎は大渋滞の模様。景色を堪能していると次々とガイド
Pが登ってきて、八つ峰の頭もあっという間に人口密集地になってしまった。最後は約40mの懸垂で池の谷乗
っ越しへ降り立ち我々の八つ峰登攀が終了した。
剣岳頂上では祠の前で恒例の組体操写真を取ったものの、風とガスが出始めたので早々に下山に掛かる。


お約束のポーズ

早月尾根への分岐付近で懸垂。通常、氷化してヤバイ箇所らしいが、雪が多く、バケツトレースに近く懸垂なん
て大袈裟な、とタカをくくっていた。でも降りてみてビックリ。先行P が随分長い休憩とってるなーって思って
いたのだが、なんと1時間前にこの場所で仲間が滑落して救助隊との連絡の為にずっと待機しているとの事。こ
のPは懸垂をせずに下降しようとして1人が滑落してしまったらしい。早月小屋で分かったが、この事故で800m
滑落したが、無事に救助されたそう。主人の話では、この場所で滑落したら、ほぼ助からないらしい。とにかく
良かった。

この後、長い長い早月尾根の下り。長時間労働の疲れが出始めたので2人ペアのコンテで行動。早月小屋までで
行動を終了。明日はゆっくり降りるだけねという事で、小屋でビールを仕入れ、持ってる酒、つまみ類を絶滅さ
せて就寝。

■5月5日 (晴れ)  *S津*
今日の歩きは馬場島までなので5時に起きてゆっくりと支度する。
小屋の前に鯉のぼりがあったので(今日はこどもの日)鯉と一緒に写真をとってから歩き始める。丸山山頂にけ
っこう大きなクレバスが開いていた。景色に見とれていると落ちてしまいそうだ。
1600m付近で夏道が、所々出てきているのでアイゼンを取って歩き始める。
途中でイワカガミが咲いていて目を楽しませてくれる。他のお花は咲いていないのかなと思ったら、カタクリの
群生に感激。その他にもタムシバ、エンレイソウ、イカリソウ、山桜などなど一気に春爛漫の世界に歩みが遅く
なる。
馬場島ではタクシーが待機していた。途中で剱をバックに記念写真を撮ってもらったりしながら富山まで行って
もらう。(わがままな客だなー)
富山で4日間の汗を流し、萩原君に教えてもらったお鮨やで、富山のお魚と日本酒をたらふく飲んで食べて帰途
についたのでした。(岩トレ帰りの壮行会もすごかったけど今回も皆の飲む量にビックリ(@_@;))


【山行を終えて】

◎S津
今年のGWは、雪なんかないでしょうと思っていたのでノンビリ山行でもと思っていたが
T城Lの募集にチンネ・・・とゆう文字があったので迷ったあげく募集締め切りギリギリで応募した。荷物、訓
練等の問題もあり計画で八ツ峰と、剱尾根上部となり、結果的に八ツ峰だけだったがGWでは考えられないほど(ル
ート集と様子がまったく違う)べったり雪の付いた八ツ峰を辿れてとても感激でうれしかー。懸垂支点なんて掘
り出せないのでスタンディングアックスビレーで確保しながらのバックステップ、土嚢懸垂(不帰以来2度目)、
超極細ナイフエッジのトラバース、急な雪壁などなど緊張しつつも景色も最高でとても楽しかった。この楽しか
ったは、LのT城さん、SLのA久さん、M尾さんとメンバーに恵まれたのも大きかったと思う。
後ろから来たガイドの方はスノーボラードで懸垂(後ろに同業者がいるので念のためバックアップをピッケル
で取ったといっていたが)したと言っていた。私はやったことがないので今度訓練の機会があったら試してみた
い。

◎M尾
一昨年4月、萩原君、岡田君と源次郎尾根を登攀した。終始横目で見ていた『剣・八つ峰』、お天気とメンバーに
恵まれ、素晴らしい登攀ができました。あと2年で還暦の私にとっては今回、またとないチャンスだったのです。
雪が少ない、少ない、と言われ続けた今年、剣近辺に限って言えば、例年よりかなり多いように思えました。垂
直に近い雪壁登り、靴幅しかない、絶対に落ちられないナイフリッジの連続。懸垂支点は雪の下の下。掘り出し
不可能!ロープを出してのクライムダウン、そして土嚢懸垂などなど。
真っ青な空の下、昔見た映画「エベレスト」のポスターのようなカッコイイ「八つ峰」が満喫できました。いま、
デジカメ画像を見返しては感激に浸っています。
訓練山行に参加できず、諦めかけていたところに救護策を考え、参加を認めてくれたT城リーダーに感謝しています。そして、『チームT8』に乾杯!です。

◎A久
T城さんとは以前の会からの仲、というよりも山の先生でした。正月の北鎌でやっと彼の山行実績に追いつき、
今回の八つ峰ではじめて肩を並べる事ができるかなと思いましたが、やっぱり実践ではまだまだ経験の差があり、
学ぶべき事がたくさんありました。
今回の山行はT城さんからの誘いがあり、お互いに少ない時間をやり繰りし正月明けからトレーニングを重ねま
した。 山行を作り上げるこの過程がいい。トレーニング山行を重ね、同じ釜の飯を喰いテントで酔っ払い、一
体感、意志統一、パーティのまとまりができたと思います。 本番では各人がそれぞれの役割を果たし、稜上で
各人の距離が離れていても、皆が効率よく行動する事ができました。
また、夏の本番に向けて新しいパーティを、たまごっちのように育てていければと思います。

◎T城
短期間で詰め込みトレを行いましたが、実力の揃ったメンバーで意志の疎通もよく、統率の取れたパーティが
できたと思います。行動中やテント場でムードメーカーになってくれたS津さん、行動中も安定感があり「バックステップはキライ!」と言っていたのがウソのようでした。「私だって怖いのよ!」と言いながらいつも落ち着き払っていたM尾さん。その落ち着きは豊富な山行経験に裏打ちされたものなのでしょうか。サブリーダーとして当初から計画を支えてくれたA久さん、未熟な自分にとって精神・技術両面で常に大きな支えでした。
















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