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読み物・エッセー : 冬山失敗談(その1) テント生活と大型かいろ
投稿者: admin 投稿日時: 2008-3-6 11:52:09 (2005 ヒット)

冬山失敗談(その1)

テント生活と大型かいろ

H比宏尚

私の冬山は高校時代に山岳部に入部したことより始まりた。もう半世紀も前のことです。今時は映画で「夕陽ガ
丘3丁目」としてお馴染みの昭和30年時代ですから、冬にしかも雪山に行こうなどとは一般の家庭では信じら
れないことでした。家族の了承もなかなか得られず説得に苦労しました。一応了解をとってもその後が大変でし
た。テントで宿泊するとのことで凍え死ぬのではないか、布団はどうするんだ、暖房はあるのか、食事はどうす
るんだ、などなどです。先ず一番大変だったのは装備の調達でした。  

山岳部の先輩を回ってアイゼン、ピッケル、ワカン、シュラフなどを借り集めるのです。現在のように装備関係
が出回っていない時代です。多くの冬山装備は、朝鮮戦争時の米軍の放出品とよばれるものでした。シュラフ、
オーバー手袋、オーバーシューズなどは代表的です。私は登山靴も放出品の靴にムガーやトリコニーを付けて使
用していました。戦争時代の米軍の放出品は、御徒町のガード下でいろいろと売られていました。ニッピンはそ
うした放出品を売っていた店の1軒でした。何とか主要な装備を借り集めて最後に炭俵です。炭俵は、エアーマ
ット代わりに使用します。炭店で使用済みの炭俵を貰ってきて良く掃除しないと1晩泊まった後は黒くなってし
まいます。

冬合宿の荷物は、高校2年で約25Kg位でしょうか。キスリングがパンパンでした。当時は、祖母が心配して
そっと大型のかいろとかいろ炭を差し入れてくれました。かいろは、装備品リストには有りませんでしたが、ま
ーいーかとザックの中に入れて行きました。

冬の合宿は、毎年八ヶ岳の行者小屋ベースの定着でした。学年ごとにコースが決まっていました。1学年は、中
岳から赤岳、文三郎のルートです。2学年は、赤岳鉱泉より硫黄岳などでした。3学年は阿弥陀岳周辺でした。
各コースには、先輩が何人か付いて指導に当ってくれていました。行者小屋周辺のもみの木の林の中に設営しま
す。テントは、ウインパー型です。雪踏みして地固めをした後に先ずザックを空にしてグランドシートの上に広
げてその上に炭俵をひきます。

個人装備は、布団袋の様な大きな袋に入れてテントにいれます。下がザックや炭俵なので安定しませんのでおぼ
んの大きめのを使用します。コンロは、ホエブスでガソリン燃料です。1年では、火気は触れません。2年以上
の上級生でした。1年生は、テントの奥で背中を丸めて小さくなって先輩の動作を見守るだけです。最近では、
殆ど聞きませんが、当時は良く火の取り扱い不備による火事でテントを消失することが多かったのです。

外に出るときは、オーバーシューズを付けて出ますが、入る時にはオーバーシューズの雪を良く落とさないと溶
けてシュラフを濡らす事になるからです。現在の様にシュラフカバーなどが無かったので、シュラフには、登山
靴に新聞紙を入れてから、その靴をオーバーシューズに入れてシュラフの足元に入れて凍らないようにしました。
また、アイゼンバンドもワカンの取り付け紐も同様にシュラフにいれました。そんな訳でシュラフの中は冷蔵庫
のようでした。

寝る段になって大型のこんろを出して炭に火をつける時に先輩から「お前何しているんだ」と聞かれましたので
「かいろに火をつけているんです」と言うと、皆を酸欠にするのかと叱られました。当時のかいろ炭は、石炭の
粉で作られていたので一酸化炭素中毒に生りやすいだそうです。テントが凍ると通気が悪くなります。その上シ
ュラフは、靴、バンド類などで満杯状態でした。4〜5人用テントは動くのもまま成らない状態でした。

午前4時起床。水を作り朝食事をし行動用の水を作り、テントを出るのは6時半頃になります。それからが大変
です。硬い靴を履き、オーバーシューズを付け、懐に入れて暖めていたアイゼンバンドをアイゼンに付けて素早
く凍らないうちに付けないと、歩いているうちに緩んでしまうのです。当時は、まだテルモスが普及していなか
ったので水筒にお湯を入れて衣類で保温してザックに入れました。

一番きを付けていたのはザイルでした。マニラロープでアマニユを付けてよくしごかないと硬くなって使用出来
なくなるのです。針金のようなザイルでは危なくて使用できません。テン場に戻るとテントの周りの雪き掻きを
しテントを張りなおし、水用雪を集めます。

合宿の最後の日は、テント撤収の後で濡れた新聞紙や炭俵を盛大に燃やします。この焚き火を囲んで「山への別
れ」の歌をうたって下山します。こうして3年間が過ぎました。冬山失敗物語と言うより冬山始物語になってし
まいました。

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